技術職女子の日記

技術職女子がもがいてる日記。

工学系向け研究室の選び方(配属済の人にも一部読んでほしい)

今回は
【工学系新4年生向け、研究室の選び方】
修士2年の立場からお送りします。

そろそろ研究室配属の時期です。
見学には行くつもりだけれど、そもそも何を基準に選べばいいかわからない。そんなあなたにこの記事を。

本記事の内容は以下のとおりです。

1.本記事の対象
2.要約
3.前提として知っておいてほしいこと2つ
4.本題~研究室の選び方~
4.1 チェック項目リスト
4.2 各項目の説明
5.まとめ
6.謝辞
7.個人的なあれこれ(おまけ)




1.本記事の対象
恐らく理系全般に言えるだろうとは思いますが、念のため工学系に限定させて頂きます。さらに、分野依存が大きい話については、機電情の人以外には当てはまらない可能性もあります。

対象は、「普通の工学系の大学生」つまり「絶対にやりたい研究がある訳じゃない、修士号までは取って、企業に理系就職しようと考えている大学生」を想定して書いています。
それ以外の学生(ドクターに行く学生、文系就職する学生など)には当てはまらないこともあるので、注意して下さい。

また、「3.前提として知っておいてほしいこと2つ」については、「研究室に配属済の理系学生」にも読んでほしいです。

なお、たかが3年研究しただけのペーペーの言うことなので、過信せず自分できちんと考えてから選んで下さい。

需要があるかは知らないけれど、書きたいからいいや。笑



2.要約
最初に結論を言ってしまうと、
『迷ったら、指導者で決めろ』
この一言に尽きます。

大事なことなので2回言います。
『迷ったら、指導者で決めろ』
です。

これだけ覚えて帰ってもらえたら満足ですが、
流石に雑すぎるので補足していきます。



3.前提として知っておいてほしいこと2つ

本題に入る前に理解してほしいことが2つあります。

1つ目は「本人の有能さ≠研究成果」ということです。
研究成果をあげられるかは、だいたい以下の項目で決まります。
・先生の指導力
・本人の有能さや努力
・研究の予算
・研究のテーマ

本人の有能さ努力以外は、【全て研究室選びで決まります】。
さらに、本人の有能さすら、先生の指導力や研究室の雰囲気に大きく依存します。

成果の有無なんて、初期値問題です。
今後研究で行き詰まった時、自分を責めずに、このことを思い出して下さい。


2つ目は、「研究成果が全てではない」ということです。
修士以下の学生の研究は、本人にとって「長い研究者or技術者生活の足がかりをつくるもの」に過ぎないです。(※企業に就職する人は。アカデミックに残る人は知りません。)
目に見える成果はあるに越したことありません。しかし、目に見える成果(査読付きの論文書いたとか特許取ったとか)だけでなく、目に見えない成果(研究者or技術者としての成長、自分の失敗の記録のおかげで次の代の人が同じ失敗をしないで済むなど)を自分で認められないと、苦しくなります。

また、就職活動では、「目に見える成果自体」よりも「自分の研究に対して、どこまで自分で考えられているか」が重視されます。具体的には、「研究の背景、目的、自分の取り組み、現状出ている結果、それから得られる知見を、筋の通ったストーリーとして組み立てられる」ことが重視されます。
仮に良い結果が出てなくても、それを踏まえた今後の方針が立てられていれば、大体なんとかなります。(※研究職の場合は私はよくわからないので、良い結果不要と断言できませんが。)
ただし、このストーリーづくりはある程度成果が出ていた方がやりやすいです。そうゆう意味では、就活までに多少の進捗を出していたほうがよいです。


4.本題~研究室の選び方~
本題の、選び方について。

まず、研究室を選ぶ際にチェックすべき点を、私が重要視する順に並べます。
次に、各項目の何がポイントか、なぜチェックすべきなのかを説明します。

4.1.チェックポイント
見るべき点は重要度順に以下のとおりです。
(1)指導者
(2)学生や居室の雰囲気
(3)拘束時間
(4)理論、数値計算、実験のいずれか
(5)研究テーマ(就職したい分野が決まってたら2か3に上げる。詳しくは後述)
(6)共同研究の有無
(7)学会発表に対する考え方

ただし、それぞれの項目は独立ではなく、互いに影響し合います。

自分的に完璧な研究室などありえませんが、1がダメなとこには絶対に入らないようにしましょう。2-7は全体のバランスを見て適宜諦めて、という感じ。

また、2-7の優先順位は人によって変わるかもしれません。あくまで私の経験から考えた優先順位です。


4.2.各項目の説明
それでは、各項目について説明していきます。


(1)指導者
大事すぎて説明しきれる自信がないレベルです。(2)以降の項目を間接的に決める存在でもあります。
a教育者として、b研究者としての2つの観点で話します。aの優秀さとbの優秀さは、必ずしも一致しません。

a.教育者として
1番重要な観点です。しかし、これを知るのは難しいです。
授業での様子(特に実習など会話がある授業)と、研究室の先輩に「先生は研究室でどんなですか?」と聞いた時の反応から判断するしかないです。

・人間としてまとも
学生を駒のように使わない。何かができない人に対して人格否定したりしない。性別や好き好きで差別しない。学生の事情を考えない無茶振りをしない。
研究室は治外法権です。労働基準法は私達を守ってくれません。

・学生の成長を考えてくれる
前述の通り、学生本人にとって、学生時代の研究は「長い研究者/技術者生活の足がかり」です。
学生が成長するためには「ある程度自由度を与える」かつ「迷走しそうな場合にきちんと指導する」というバランスのよさが必要だと思います。

研究で1番大変なのは「方針を決めること」です。
先生に言われた通り実験やコーディングをすることは作業に過ぎないので、それだけでは十分に成長できません。
しかし逆に、学士、修士レベルで一人で方針を決めろと放置されると厳しいです。ここで与える自由度と指導のバランスが必要になります。

自由度を与えると「目に見える成果をあげる(研究室の予算のため)」効率は落ちてしまいまうので、b研究者として優秀な先生じゃないとできないかもしれません...

また、研究にどの程度自由度が与えられるかは、分野に依存するかもしれません。
例えば、実験をたくさんやってデータから傾向を掴むことに意味がある、という分野では、やるべき実験が最初から決まってたりするかも。

・尊敬できる
研究室の色はトップの指導者により決まります。何もわからない若造が1年以上そこにいれば、必ずこの色に染まります。そもそも研究とはなんたるか、研究する上での心構え、研究の進め方、発表の仕方など、今後の研究者/技術者生活の基礎を習う訳です。なるべく尊敬できる先生の元に行きましょう。



b.研究者として
・予算が多い
研究のための装置にはお金がかかります(特に実験の場合)。分野によっては、装置のスペックが重要な要素となるため、先生がその分野で強いと「お金がある→特殊な装置が買える→その装置で実験したデータは全部貴重→成果として認められる→お金がもらえる」と正のループに乗ります。

数値計算系は計算機のスペックに聞いてくるのかな?理論系の経済事情はよくしりません。


・その分野で強い
お金の面以外でも、その先生に話を聞けること自体が自分の研究のプラスになったり、先生の繋がりでセミナー等に参加できたり、共同研究の機会があったり、勉強の機会が増えます。
また、企業で需要の高い研究分野ならば、研究室名で就職しやすくなる可能性もあります。


(2)学生や居室の雰囲気
これによって、研究室滞在時間の幸福度が決まると言っても過言ではないです。
雰囲気を見る際は、「a人間関係」と「b研究への熱意」の2つをチェックしましょう。

a人間関係
最低限の基準として、仲が悪そうなとこより、良さそうなところの方が居心地がいいです。
研究してると1回は絶対につまずくことになります。その時に周囲がギスギスしてる、心許せない人だらけだと地獄です。

あとは、ノリが自分に合いそうな、馴染めそうなとこを見つけてください。

人の悩みはだいたい「金」「人間関係」だと思います。なので重要です。

b研究への熱意
自分と同程度かやや高い研究室に入るのがおすすめです。
同程度がいいのは、自分だけやる気がないと居心地が悪いし、自分だけやる気が高いとディスカッション相手に困るからです。
しかし、4年生の時よりも、研究室ナイズドされたM1以降の方がやる気が高まる可能性があるので、自分よりやや熱意高めの研究室に入るのがおすすめ。な気がする。


(3)拘束時間
これによりライフサイクルが決まります。ただし、自分の希望と極端にかけ離れてさえなければ、割とどうでもいい項目です。
個人的には週休2日、1日平均8時間以上だときついと思ってます。平均拘束時間は分野によるみたいです。

注意すべきなのは、研究室での拘束時間とは「コアタイム(明文化された拘束時間)」だけではないということです。
「雰囲気的に居なければいけない時間」や「与えられる仕事量をこなすために居なければいけない時間」により、研究室滞在時間が決定する場合も多々あります。注意しましょう。

1つの実験に時間がかかる分野では拘束時間が長くなる傾向にあります。


(4)理論、数値計算、実験
工学系の研究はざっくりと上の3つに分類出来ます。1つしかやらない研究室も、全体としては3つともやってる研究室もあります。(個人的には、後者の方がおすすめ。違うことやってる学生とも話せた方が学びが大きいから。)
学生個人としては1つをメインでやってもう1つを少しかじるという感じになることが多いです。(例えば、実験メインだけど、実験でできない条件について数値計算で検討するなど)

テーマが希望と違うことより、この分類が希望と違うことの方がきついと思います。
私は実験メインですが、理論やれとか言われたら多分卒業できない。笑
理論は賢い人しか無理です。とりあえず何かデータ取る、ということができないからです。

就職は、ざっくりしたイメージでは実験≧数値計算>理論の順でしやすい感じ?多分。そんながっちりした決まりではないけど。
理論の人は、研究と企業での仕事をうまく繋げるトークをできないとけっこうきついらしい。


(5)研究テーマ
説明するまでもなく、興味持てる方がいいです。

あと、就職したい分野に近い方がいいです。
技術系の採用方法は企業によって、マッチング(受ける部署と研究が関連してないといけない)と、入社後配属決定の2種類あります。マッチングで採用する企業に行きたいと決めてる(かつ、学歴的にその企業に行ける見込みがある)なら、この項目の優先順位を2か3番にして下さい。


就職後の仕事内容と学生時代の研究内容がピッタリ合うということは中々ないですが、こじつけでいいからなんとなく繋がりを見つけられないと、就活面接できついかもしれません。(入社後配属決定タイプでも)

(6)共同研究の有無
共同研究のメリット
・予算が豊富な場合が多い
・方針で迷わない、迷走しない
・企業とだったら就職のコネができる場合も

デメリット
・自由度が低くやらされてる感ある場合も
・納期が厳しい
別コミュニティの人とのすり合わせが大変

人とのすり合わせが大変なのが大きいです。ただ、就職後に必要な能力なので、練習にはなるかもしれません。
就活では、「グループ全体がやってることはわかりましたが、あなた自身は何をやりましたか?」と必ず聞かれるので注意してください。

(7)学会発表の考え方
どんどん発表しろなところと、なかなか発表しないところとあります。お金があるとこの方が発表多いと思う。
授業料や奨学金免除狙うとか事情があれば、たくさん発表するに越したことないです。
あと、企業のも含めて研究職に就きたいなら、なるべく発表した方がいいかもしれないです。これはどこまで効いてくるかわかりませんが。

「自分の研究について他人に説明する能力」は思った以上に重要で、私自身苦労しているところです。
工学系の分野で、一人でできることは限られています。自分のアイデアや得られた知見を伝えることは、研究室でだけでなく働く上でも必要になります。その練習と思い、機会があれば積極的に参加した方がいいと思います。
(私は2回しか出せなかったですけどね笑)

5.まとめ
本記事では、工学系の研究室配属前の学生さんに向けて、研究室の選び方を書きました。
まず研究に関する考え方を書き、次に具体的な選び方について書きました。選ぶ時のチェック項目の中で「先生」が重要であることを覚えて帰ってください。

ちなみに、本記事の対象外としたドクター=出家くらいに思った方がいいです。
一旦修士卒で企業の研究所に就職後、社会人ドクターになるルートは、リスクが少ないので出家じゃないです。これもこれで、優秀じゃないとできないルートだけど。


6.謝辞
今回書いた内容、特に「3.前提として知っておいてほしいこと2つ」は、私が研究に行き詰まった際に、先輩と先生に聞いた話を反映しています。この場を見ていてほしくないですが(笑)、この場を借りてお礼申し上げます。

7.個人的なあれこれ
この記事は、他より圧倒的に力を入れて書きました。

人生の中で、順調な道を歩けるか、そこから脱線するかなんて紙一重です。脱線しかけた時に踏みとどまれるかは、周りの人に恵まれるかの運次第だと思います。本人が有能かどうかの話ではありません。

私は一度脱線しかけ、なんとか踏みとどまりました。
一時は、研究がうまく行かず、それにより就活中も自信が持てず、心が折れそうになっていました。しかしその時、先生や先輩の話を聞き、新たな視点で自分の状況を見つめ直すことができました。

自分がしてもらったことを、次の代に返したいです。自分と同じところでつまずきうる後輩に向けて、助けになることを発信したいです。
拙い文章ではありますが、少しでも後輩達の助けになれば幸いです。


とかえらそうなこと言って、今卒業論文が書けなそうであっぷあっぷしてるとこなんですけどね!
~fin ~