技術職女子の日記

技術職女子がもがいてる日記。

地方の高齢者が運転免許を手放すことは何を意味するか

これは知床旅行の際に居酒屋の女将さんと話した時に考えたことで、実際にそこに住んでるわけでもないのだけど。

公共交通機関が十分通ってない地方において免許を手放すのは、人によってはこれまでの自分の生活の大部分を諦めて手放すのに等しいのではないかと思った。単に不便で済む問題ではなく。

世間で高齢者による交通事故が盛んに取り上げられていて、早めに免許を返納することが推奨されている。
ツイッターでも、ピンピンしたおばあさんが「今判断力があるからこそ今運転できても免許を返納した」みたいなエピソードがバズっていた。私もよい話だと思った。

でもよくよく考えると、これが美談ってだけで終われるのは、多分都市部とそれなりにバスが通った郊外の話である。

私が行った知床の居酒屋は、女将さん1人で切り盛りしている。年齢は確か60は超えてるって言ってたけど、すごく若く見えた。メニューのほとんどは、女将さん本人と息子さんが獲った地元の山菜と魚介類。特に山菜はあまり食べなれないものが多かったけど、どれも美味しかった。多分東京とかで食べようと思ったら、珍しくて高いんだろうけど、びっくりするほど安かった。女将さんはだって普通に近所から取ってきたものだもん、という感じで、お店は金儲けのためというより生活の一部という感じがした。
女将さんは自分の番屋を持っていて、海にも潜るし、山菜採りの際にクマに遭遇したこともあるそう。す、すごい。もちろん食材を取りに行くための移動は車が必要不可欠である。

もしも、ここで元気なうちに早めに運転免許を返納したらどうなるだろう。
山菜や魚介類を自分で取りに行けなくなる。そうすると居酒屋の方も存続の危機である。諦めて食材を買い付けて提供することはできるけど、そうなると店のメニューも価格もコンセプトも全く変わってしまうだろうな。生活の中でかなり長い時間を占めていたものが変わってしまう。タフな人がやりがいを失ってしまったら、老け込んじゃいそうだ。
とか考えたら、気軽に早めに免許返納しましょうなんて言えないなぁ、と思ったのでした。

社会の問題について議論する時、都市部やせいぜいその周辺の郊外の環境を前提とする人が多い、自分も含めて。もっと想像力を持ちたいし、手っ取り早く想像できるようにするにはその土地に行ってみることだし、旅行はやめられないと旅行好きを自己肯定したのでした。



あとこれは本編と全く関係ない印象に残った話。
私は一人旅だったんだけど、女将さんから「一人旅なんて度胸あるね、私には勇気が出ないわ」って言われた。えー、女将さんの方が度胸あるじゃんって感じだった。
とにかくタフで度胸のある感じの人で、店を1人でやってるし、怪我して後遺症が残るって言われたけどすごいリハビリの末元どおりに回復したとかいうし、友達と旅行に行った際は基本的にずっと運転してるらしい。神経質でネガティブで身体貧弱な自分とは大違いだとか思って話してたのに。
たぶん、度胸の問題じゃなくて、時代の差なんだなぁ。女将さん世代で女が1人で遠出するなんてあり得ないことだったんじゃないかな。どんなに個性強い人でも、時代の特徴?的なものから完全に自由ではないんだなって思った。思っただけ。